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1984年9月20日、東京生まれ。4歳からピアノを学び、慶応大学時代にはライブハウスやクラブで演奏を始める。卒業後、クラブ系ユニット「INNER CITY JAM ORCHESTRA」での演奏が注目される。15年9月「東京JAZZ」に2日間出演、大きな話題になる。16年「ザ・デビュー!」でメジャーデビュー。スタンダードから自作、アコースティックからエレクトロ、スイングからEDMと、全てにおいて振れ幅の大きなエネルギー感で圧倒する。 |
2017年初めに発表したソロピアノアルバム「Dream of You〜SaloneⅡ」に続く、高木里代子のフルアルバムである。高木はメジャーデビュー作「THE DEBUT!」(16年)の前に、東京・成城学園のミニホール「サローネ・フォンタナ」で録音した「Salone」(15年)を発表している。これは「Ⅱ」同様、ソロライブ盤であった。本作「Resonance」は、同じソロピアノながら観客を入れないスタジオ録音という違いがある。大差ないと思われる向きもあろうが、「DEBUT」とも「Salone」とも一線を画す大きな飛躍を遂げた作品となっている。 高木は、大々的な売り出し作戦に乗ってジャズシーンに登場した。エレクトロとダンスを念頭に置いた、ポップ・ジャズを広めるに当たって、本人も喜んでいたし、どこか動脈硬化的なジャズ状況に活を入れるという一定の成果があったと思う。だが、余りにもプロモーションの印象が強烈だった。18年は「次の段階」への方向を見極めるのに時を費やしたように見える。ただ、それが停滞や無為な時間ではなかったことは、この「Resonance」で証明できたと言えよう。 本人のコメントにもあるように、高木は改めて「ピアノの響きに深く向き合って、名曲の永遠の美しさ」を表現したいという大きな覚悟を表明している。新しいスタイルを追い求めるのもジャズだし、古いスタイルを掘り下げるのもジャズである。が、高木は、ピアノそのもの、楽曲そのものへの直接的なアプローチを選び取ったようだ。ある意味、子供の頃から親しんだ、ピアノ音楽への原点回帰である。 これまでライブで披露している名曲が多いが、イタリアの名器「ファツィオリ」に対峙した高木は、すべての曲をさらい直した。ファツィオリの響きは、どうもそれを要求したようである。自分の表現に新たな「何か」を求めていた高木にとって、この深く耽美的な響きを持つ楽器は、別次元に運んでくれる未来のマシンだった。リズムに追い駆けられることもなく、ビートに翻弄されることもなく、コードに束縛されることもなく、ピアノの響きに包まれ、そのためだけに呼吸し手指を動かし集中しているのが聴き取れる。悲しみに傷つきやすい青春の脆さや小さな人間の危うさを響きに変えて対話しているようである。静謐で透明感あふれ、情景と物語がくっきりと眼前に広がる。高木は新たなステージに至った。
高木は、16年2月、アルバム「ザ・デビュー!」で、メジャーデビューした。前年夏の「TOKYO JAZZ」戸外ステージで2日間に渡り水着姿での演奏を繰り広げ、大きな話題を作ってのデビューで、ベストセラーとなったのは記憶に新しい。だが、その呼び水となったのが「サローネ」であった。同作は「TOKYO JAZZ」より前の15年1月にハイレゾ配信、5月にCD発売が始まっている。高木はそれ以前にもインディーズやプロジェクト名義でのアルバムリリースはあるが、実質的な全国区デビューは「サローネ」なのである。 |
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